Charlotte 8話まで(乙坂有宇について)

 すげー話が動きそうなので現状でのまとめを残しておく的なアレ。備忘。
 例によって例の如く自分用メモなので不親切な部分だらけですがなんかあったら応答とかはするかもしれません。しないかもしれません。
 
 めっさ長くなりそうだったのでひとまず乙坂兄への言及だけ。
 
 ……乙坂に関しては一話の時点から既にゲスさよりも異常さの方が強く印象的で、能力の濫用によって獲得せんとしたものが成績優秀者としての地位やスペックの高い女性を恋人とすることそれ自体でしかなかったことなどは極めて歪であるように僕には思われる。他人の歓心を集めるために能力を乱用して不当な地位を得るという振る舞いだけ見れば確かに小者であるように思えるが、しかしそこで志向されているのが徹頭徹尾他人の歓心でしかない/そこに留まり先に行かないことは、注目に値するんじゃないだろうか。
 乙坂は承認されることの歓びに突き動かされているようには見えないし(いい気になっているような描写はあれ、それが行動原理として機能するほど強いものとは思われない)、白柳との関係についても恋人になる/であることのステータスのみを考慮していた。白柳から決別を言い渡されるに至ってもなお短い間とはいえ自分に好意を寄せていた美少女の人格に関しては全く哀惜の念を見せず、ただ「優れている筈の自分がフられる」という事態のみを危惧して見苦しく取り繕うというのは、クズなどという生易しい形容で表現できるものではない、もっと重大な欠落を感じさせるものだった筈だ。
 でまあ電波なんだけど、乙坂有宇は強く他人の価値基準を内面化していて、そこに彼独自の判断が介在することはない―――成績がいいのは賞賛されるべきことで、美人の恋人がいることは羨望されるべきことだから、そうする―――といった解釈を僕は採用したい。短時間の憑依という能力によって自己を外部に限りなく広げ続けてきた彼がそのような空虚さを己の中心に抱え込んだという理解は、図式的に過ぎるにせよ、それなりに便利な物差しとして機能する筈だ(とゆー感じでスタートしたのだけれど、実際のところ、上述したような空虚さは能力によるものというよりも、もう少し彼の与り知らぬ要因に下支えされたもののような気が8話時点ではしてるんだけど、とりあえず書き残してはおく)。
 そんな乙坂が一話時点で既に裏表のない心配の言葉を投げ掛けたり、心中げんなりしている甘いオムライスを美味しいと誤魔化したことから、彼の妹への情の深さについては容易に酌むことができる。また、生徒会への意に染まぬ所属の理由が、補助金によって妹を楽にさせられるという甘言だったことも想起されるべきだろう。乙坂有宇という、人の只中にあって自分自身を喪失してしまうような人間が、取り繕うことを以ってのみ人と対峙するような振る舞いを自己に許すような人間が、何を意識するでもなしに自分らしく触れ合える対象。彼にとっての日常とは妹との二人暮らしをのみ指すのであろうし、そう考えることで、妹を失う前後の彼の狂乱の、その唐突さは強く減じるだろう。失いかけるまで、或いは失って初めてその存在を強く認識するというのは、それだけ妹の存在が彼にとって身近で、意識にも上らない程に、彼を形成する世界そのものだったということだろうから。大切な肉親の喪失は彼の世界観に照らし合わせて彼に衝撃を与えたのではなく、世界観そのものが失われるような結果を齎した、ということ。後に残ったのは妹の存在に拠って形成されていた部分をごっそりと失った、虚ろな乙坂有宇の残骸だった―――と解釈することで、白柳の説得を飽くまでも理路整然と切り捨てていたあのまともさが乙坂の自動的な部分の発露であることや、また彼を激昂させた白柳の「心が病む」というフレーズがどれほど彼の癇に障ったかなどを整合的に解釈することが可能だ。病むような心を失っていた(或いは、見失っていた)からこそ、彼は絶望に襲われるのだから。
 
 ……という風に繋げていくと、七話後半でゾンビゲーに破壊衝動を刺激されていたような描写がどうにも綺麗に定位しきれなくてもにょる。あそこからDQN狩りに展開していくので暴力に魅入られることには意味を見出したいんだけど。定型的な描写に過ぎないというのはまあそうかも知れないし些細な事柄でしかないというのは理解できるんだけど、少し気持ち悪さが残る。麻枝准の有する個人的なリアリティ上あれは自然なことだったのだ、という雑な把握がどうも一番それらしく感じられてしまうのだがあんまりそういう解釈に与したくないので(正誤性ではなく趣味、というか意地の問題として)。