戦姫絶唱シンフォギア(全話)

 観終わったばかりの取り留めのない話をそのまま書いておく。たぶん論理甘い。
 どこまでが自分一人で考えたものかは例によって例のごとく既に不明瞭。
 
 終わりの名を持つ者(この名称好きすぎて困る)。
 彼女の計画―――統一された言葉亡き世界を痛みで繋ぎ直すこと―――が正しいか正しくないか、といった倫理的な判断は措くとしても、とりあえずそれが実現可能性に乏しいものであるとは指摘できて、天変地異で恐慌を来した人々の前に超強い新人類が降り立ったからといって、世界の統一が成るとは考えにくい。彼女が語るような支配の成立には、充分に原始的で、且つ狭い世界であることが要求される。だから、彼女の語る理想の世界への道筋は杜撰で、雑だと言うほかない。
 ……だが、彼女の最初の目的はきっと、創造主と言葉を交わすことの方だったろう。自分で規定した目的はいつしか妄執を産み、また、その通りに振る舞うことで目的は再帰的に強化される。実存と本質を相互に補完し始めた人間は、どこまでも強度の高い現象と化す。想い人に言葉を告げる、ただそれだけの目的が、主観的な大義をも纏ってしまう。二つの目的が混ざり始めた、そのタイミングがいつなのかは知れない。だが、カ・ディンギルが破壊された時の彼女の嘆きは、その直後にもうひとつの目的―――おそらく、本命の目的―――が明かされたとはいえ、それとは別に、強く真実味を伴うものだった。或いは自分を納得させるための方便かも知れないし、或いは雪音クリスのような協力者(各時代に複数いたのだろう)の了解を得るための甘言だったかもしれない彼女の理想は、最初に掲げた創造主への愛とは別に、確かな強さをもって実在していたように思える。
 始まるための想いと、続いてゆくうちに得る想いとの、小さなズレ。
 
 この種の目的の摩り替えに関して、直ちに想起されるのは風鳴翼の在り方だ。一話の出来事で「奏と共に歌い続ける」という目的を失った彼女は、紆余曲折の果て、戦士としての在り方を自らに求め、またそれを防人の在るべき姿として定義し、自らがそうであり、また、そうであったと仮構するに至った。目的の捏造と、そこから帰納的に導かれた本質の自認。本質と実存とは相補的に働き、原初の想い―――ただパートナーと共に居たかったという単純な感慨を置き去りにしたまま、ただ一本の剣としての風鳴翼を駆動し続ける。彼女が救われるのは、かつて共に在りたいと想った少女が視ていた景色を、立花響の言葉を通じて眺めた時だ。そこで漸く因果の捻れは解消され、彼女は両翼を取り戻す。彼女の中の天羽奏が、笑顔を見せる。
 一方で雪音クリスは、救い手として/また或いは母親の代理として依存していたフィーネと共有していたその理想とを同時に失い、争いを無くすという願いだけを抱えたまま、変われない自分を駆動し続けていた。願いそのものが砕けた訳ではないにせよ、それを叶えるための手段も理想も失って、それでも彼女は対症療法的に現れたノイズを倒し、二課を援護していた。慣れ合いはしない、と吐き捨てながら、隠しきれない罪悪感を覚えつつ。後に風鳴司令の言葉を通して、亡き両親の想いが自らの理想と寄り添うことを知った時、宙ぶらりんとなっていた彼女の理想は確かな形を持ち、再度、支えとなった。
 立花響もまた、助ける者としての本質がどの体験に根差しているのか、どこからその想いが生まれたのか、迷いを抱えたまま戦っていた。誰かを助けたいという想いに偽りはない。でも、この想いはどこから来たものなのか。病室での風鳴翼の問い掛けに端を発する自問自答は、小日向未来を助け/また彼女に助けられる過程に於いて、嘗て天羽奏から託された想いの継承であると結論付けられる。
 
 彼女たち4人に共通するもの。それは始まりと続きとの目的のズレ、そしてその補正だ。最後には各々が手にしていた答え。だが、そこに真っ直ぐ辿り着けた者はいない。終始高い強度を見せつけていた響でさえも。誰もが一度は迷い、道を見失っている。そこで触れた誰かの言葉が、彼女たちに後ろを振り返らせ、前へと歩む為の答えを齎す。
 ―――シンフォギアとは再解釈の物語であり、再発見の物語であると思う。嘗て経験した事象の意味が、接触と対話とによって変化する。過去を振り返ることで未来を掴む物語の演出がしつこいまでの再演に満ちていたことは、極めて自然だ。そのように考えた時、無限の未来を渡り歩くであろうフィーネに投げかけられた立花響の言葉は、だからこそ、何よりも温かい。
 ……打倒することではなく、説伏することでもなく、ただ願い、託すこと。いつかフィーネにとって遠い過去となるであろうあの別れの言葉が、いつか彼女を変えることもあるだろう。これは、そういう物語だ。
 
 
 
 一端中断して、WA2(ワイルドアームズ2nd)を踏まえた雑感。ゆるゆるっと書きます。
 未来との不和を重ねるにあたって使われた戦う姿の隠蔽はマリナにロードブレイザーとしての自分を隠すアシュレーを彷彿とさせる、とかなんとか。WA2において「僕のちっぽけなファルガイア」と称された恋人の腕の中は、シンフォギアにおいても全く同じ構図で、日常の象徴として扱われている。いつか帰る場所。しかし未来さんはマリナと違ってかわいいのでよいですね(なんでヒロインはリルカ・エレニアックちゃんじゃないの問題)。
 フィーネさんの防御技ことアースガルズ。視聴してる時はゴーレムの名前だと気付けませんでした。ファン失格やな。
 痛みを以って為される団結、というモチーフはそのままWA2の前半で人類が団結するために結成された共通敵ことコキュートスを彷彿とさせる。嘗て自分が提示した人類団結のための手法を作中で主人公に否定させてみせた、その決断の裏に何かしら強いものを感じたりしたトカなんトカ。
 どこかでゼットン的なアレが出てくるかなーとか思ってたけど流石に居ませんでしたねー。でもノイズは割と怪獣デザインらしいトカ。あんまり怪獣知らないので……。
 
 次回に続く(たぶん)。次はキャラ語りとか。