ご注文はうさぎですか? 第1羽

 ふーわふわ♪ どきどき♪ ないしょだって♪ と申し上げているのがお解りになりませんか?
 
 ……まず、ご注文がうさぎだった。タイトルの由来が開始4分で明かされるこのスピード感である。
 無論として(これは前回のがをられ感想とも重なるのだけれど)、ひとつの名付けにひとつの由来が対応している必要などないので、ああ、ご注文がうさぎなのだ! と発見させられる瞬間が後に控えているのかもしれない。ちょっと期待しているポイント。
 
 ココア氏について。きんモザでいうとシノみたいな、ある種のネジの外れっぷりを世界を回す原動力に転嫁することで物語に寄与するタイプの造形ではある。……のだが、絶妙に良識を備えていることがかなり好ましく感じられた。
 うさぎを注文する、姉という役割に偏執的に拘る、謎の言語センスでチノ氏を困惑させる。そういった振る舞いに強い個性を滲ませながらも、うさぎを注文した直後にコーヒーそっちのけで触ろうとして、「冷める前に飲んでください」とチノに窘められた時、申し訳無さそうにすぐ応じていた辺り、他者の心の機微にとても敏いか、少なくとも根が善良であることが窺える。あと、あのシーンではうさぎに未練を見せずにコーヒーに集中していたのもとてもよかった。チノ氏のコーヒー淹れる動作から割と手間が掛かっていると知れるあたり、尚更に。あれ、豆が違うってことは、三回に分けて淹れたのだろうし。
 そう考えると、チノ氏にかなり早い段階でお姉ちゃんとして接しようとしていたのも、それなりに彼女の寂しさを看破した、という部分があるのではないかなーとか。ここはまだ推測ですらない当てずっぽうの話だけど。
 また、ココア氏が行き過ぎた触れ合いを試みることで、チノ氏がドン引きすることが可能である(・・・・・)、というのは非常に冴えた関係性だと思う。下でも少し書いたけれど、そうやってチノ氏の側に逃げを打てる余地を作っておくことで、チノ氏の素直さを最大限に出したまま、ダダ甘な百合に寄りすぎない領域に留めておける、という機能の筈なので。
 ……などと考えると、さて、シノとアリスの関係性はどうだったか? などと考えたくなるところ。それはまた後日(あらゆる未来の日付けはすべて後日である)。
 
 チノ氏について。
 まず、寂しがりで素直で感動しいっぽい、というのが重要な気がする。抑揚なく喋る/寒色系の髪色をした/ロリの/突っ込みキャラ、という属性の組み合わせによって想像される綾波レイないしルリルリ及び彼女らの後継であるところの類型によって認識が阻害されかねない、歳相応に素直な振る舞いをこそ注視せねばならない。それはたとえば「わたしを姉だと思って、何でも言って!」とココア氏が抱きついた時の瞳の潤み/頬の紅潮であるとか、「姉妹……ですか」と言ってからのチラ見であるとかだ。
 あとアレ、入浴シーンでの「お話、一緒に寝る、わたしにちゃんと出来るかな」って台詞がもう最高で。ココア氏としては親睦を深めようとしてこう提案しているだけであり、超建設的で死ぬほど楽しい会話がしたいとか二人で寝ることでよい睡眠を得たいとか思っている訳では無論ない筈なのだが(会話したり共に寝たりすること「そのもの」が楽しいのだから)、そんな行いにすら愚直に悩んでしまうこの真面目さと初心さにやはり感じるものがある。またシリアスな話、そういった機会を持てていなかったことも想像される訳で。リゼ氏とはどのくらい親密なのだろう、とか色々想像させられる台詞ではあった。
 
 リゼ氏について。
 ちょ、ちょろいのでは!?????????????????? みたいなのは自明もいいところなので詳しく書く必要を感じない(書いたけど)。
 教官ということだな、と勇んで指導役を引き受けた割に音速でものすごいダダ甘な接し方になっちゃってたり相当早い段階でココアと呼び捨てにしちゃうあたりの、自分のラインの内側に置いた人間にものすごい心を許す感じが大変よい。ここでよそ者は認めないぞと当初は意地を張るキャラだったりしたらたぶんそれなりにストレスだったのだけれど、そうはならなかった。だから、よかった。
 二人で家に残るココアとチノに「楽しそう……」と嫉妬するシーン、カップリング読みできないのが(結果的なものかもしれないとはいえ)絶妙。あそこでどちらか片方に執着したりせず、二人が楽しそうで羨ましい、と思っているらしいのがとてもよく、一日一緒に働いただけでもう感覚的には三人組なのかなーとか思うと頬が緩む。
 あとアレ、ラテアートで戦車作った時の「まったく、そんな巧くないって!」の声色めっちゃよろしいと思う。嬉しさ隠し切れてないですなヌッヒョヒョヒョヒョヒョ〜〜〜といった感じの。
 
 うさぎについて。
 最後まで観てからもっかい見直すと、チノ氏がコーヒー淹れてる時、おそらくタイミングが難しい作業だと思うんだけど、サイフォンを観察しながら混ぜるチノ氏に何度も頷いてるのがすごくいいなーと。ネタバレしてからだとかなり観え方が変わって面白いシーンだと思う。見守ってるんやね。