Rewrite、ルチアルート終了

 ルチアルート終わり。世評通り、かなりつらい感じ。
 
 どいつもこいつも別キャラ、というのがのっけからつらい。
 もちろん歴代鍵作品の書き手たちがみな完璧なエミュレーションを行えていたかと言えばそんなことはないものの、(1ルートだけ終わらせた状況で言うのも何だが)たぶん歴代最強クラスに独自解釈感がつよいので。独自解釈、であって二次創作っぽくはないのもまたすごい(これについてはそのうち書くかも)。
 そもそも天王寺瑚太朗くんは自己規定によってしか社会的生物たるところの人間らしく振る舞えないとの独白を行う類のキャラであって、だから例えば直枝理樹くんのように受動的でありながらも原体験から他者へ手を差し伸べずにはいられない(衝動的な/打算のない)キャラに比べれば非常に微妙で描き辛いだろうとは言える。言えるのだが、そもそも繕った外面のトレースすら放棄しているように見受けられるのが実にヤバい。稚気に溢れ、悪戯心とリビドーに支配された衝動的な少年像。少なくとも、共通で見た彼とは対極的な生き物のように思う。
 ちはやさんは気遣いを放棄し、小鳥さんは軽妙さをどこかに忘れ、お静さんはよくわからなさから方向性が消えた。吉野サンとの関係性も大概ヤバかったけれど、彼についてはむしろうまいことトレースできてたんじゃないかなあとも思う。あのルートを支配するロジックに従えば、との注釈を付けさえすれば。つまり、瑚太朗くんが吉野サンと同じ地平で(=虚飾を取り払って)接することができていれば、まああれくらい好意的に振る舞うのもおかしくはないよね、という話。問題はたぶん瑚太朗くんが繕うことを止めたらアイデンティティ失うだろって一点に尽きるのですが(ゲーム開始一発目のメッセージがアレだったのだから!)。
 
 終盤の筋立ても、相当つらかった。
 瑚太朗くんだけが彼女の毒に耐えられる。誂えたような奇跡だ、君は彼女の運命の人だ。ルチアの周囲の人々は口々に言い、それが彼女の疑心を煽る。誂えたような奇跡が、想いの深さを疑わせる。だからこその悲劇、それを阻止するために皆が走る。
 ……というロジックの善し悪しは別として、なんで瑚太朗くんが「彼女を連れ戻す」ことに固執しているのか。一生傍に居てやる、と誓ったその口で、いつか正常に戻れる、帰ってこれる、だから来い、と叫ぶ、その無惨さといったらなかった。誂えたような奇跡ではなく、まさにお前のために誂えたのだと、開口一番に吠えるべきではなかったか。

「俺の血でよければ吸っていいよ。
 約束だもんな……キミと一緒に、いってやる」

 ……そういう類の、約束ではなかったか?
 
 あとまあ色々と細かいところ。
 理解してる、という台詞の多さにどれだけ傲慢なのかと思わされたり、誰の台詞だかわからない文章が多く明らかに左下のインジケータの設定に苦慮してたり、とかそういう。あとテンション上がった人間がみんな全く同じ喋り方をするというひぐらし時代からの得意技も健在でややゲンナリしたり。
 ちはやさんの想像力の貧困さが凄まじい(もはやロボット級であろう)反面、瑚太朗くんの想像力が相手の内面を完全にエスパーできる域に達していたあたりは、見る人が見れば邪悪すぎて卒倒するところかも知れないね、とかなんとか。まあアレです。説明されるのは、好きじゃない。